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 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場 合の贈与税の非課税(以下「非課税特例」といい ます。)は、高齢者層から若年世代への資産の早 期移転を通じて、裾野の広い住宅需要を刺激する 観点から、経済対策として平成21年度から措置さ れているもので、直近では、平成24年度改正にお いて、 3 年間の措置として延長拡充され、平成26 年末に適用期限が到来したところです。平成27年 度改正においては、適用期限が到来したこの特例 について、①平成26年 4 月の消費税率の 8 %への 引上げに伴う駆込み需要の反動の影響が続く住宅

市場の活性化、②平成29年 4 月に延期された消費 税率の10%への引上げによる( 8 %への引上げ時 と同様に起こると想定される)駆込み需要の反動 への対策、という 2 つの視点から検討がなされま した。

 まず、平成26年 4 月の消費税率の 8 %への引上 げ後の足下の住宅市場は、消費税率引上げに伴う 経過措置(新税率の施行日の 6 か月前までに請負 契約を締結すれば、引渡しが施行日を過ぎた場合 であっても旧税率を適用できる措置のことをいい ます。以下同じです。)が終了する平成25年 9 月 末にかけて駆込み需要があり、その後、その反動 の影響が続いていましたが、他方、下げ止まりの 兆しもみられており、先行きについても、当面、

消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動の影響が 残るものの、下げ止まりに向かうことが期待され る(「月例経済報告」平成26年11月)という状況 でした。こうした状況を踏まえ、足下の住宅市場 を活性化させるため、平成27年の非課税限度額に ついては、改正前の非課税限度額より拡大するこ ととされました。

 次に、消費税率の10%への引上げ時の反動減対 策として、改正前のこの特例は 3 年間の措置でし たが、同様に 3 年間延長した場合には、消費税率 の引上げ時期がその適用期限の到来間近となるこ ととなり、このことが住宅市場に与える影響も考 慮して措置の全体像が検討されました。具体的に は、上記の消費税率 8 %への引上げ後の住宅市場 の状況、すなわち、

① 消費税率引上げに伴う経過措置が終了する 平成25年 9 月末にかけて駆込み増

② 経過措置終了後、 1 年間程度は反動減の影 響が大きい

③ その後、下げ止まりに向かうが、しばらく は反動減の影響が残る

 これらを踏まえ、消費税率10%への引上げに際 しては、

① 経過措置が終了する平成28年 9 月末にかけ ての駆込み需要に対して平準化を図ること

② 経過措置終了後、 1 年間程度の反動減の影

響が大きい時期において、住宅需要を喚起す るためのインセンティブ措置を集中させること

③ その後も、しばらく反動減の影響が残るこ とも考慮した仕組みとすること

④ 十分な期間の反動減対策を実施することが 関係者の予見可能性を高め、住宅市場の安定 化に資するものとなること

といった点を考慮に入れて検討がなされた結果、

この特例については、その適用期限を平成31年 6 月まで延長し、更に、非課税限度額は消費税率10

%が適用される住宅を購入する者が適用できる特 別非課税限度額を設け、反動減が大きくなると考 えられる平成28年10月から平成29年 9 月までにつ いては、これを3,000万円とするといった改正が 行われることになりました。

1  適用期限の延長

 非課税特例、特定の贈与者から住宅取得等資金 の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(以 下「精算課税特例」といいます。)及び東日本大 震災の被災者が直系尊属から住宅取得等資金の贈 与を受けた場合の贈与税の非課税(以下「震災特 例」といいます。)の適用期限(平成26年12月31 日)が平成31年 6 月30日まで延長されました(新 措法70の 2 ①、70の 3 ①、新震災税特法38の 2 ①)。

 なお、非課税特例及び震災特例については、下 記のとおり、住宅の新築、取得又は増改築等

(以下「新築等」といいます。)に係る契約(土地 の取得に係る契約ではありません。)の締結をし た日によって適用できる非課税限度額が異なる制 度に改められたことから、改正後のこれらの特例 の適用を受けるためには、平成31年 6 月30日まで

に住宅の新築等に係る契約を締結する必要があり ます(措法70の 2 ①一~三、震災税特法38の 2 ① 一~三)。

2  非課税限度額の拡大

⑴ 非課税特例

 前述のとおり、この特例の非課税限度額につ いては、

① 足下の住宅市場を活性化させるため、平成 27年分の非課税限度額を拡大(1,500万円)

することとされました。

② 消費税率引上げに伴う経過措置が終了する 平成28年 9 月末にかけて駆込み増、10月以降 の反動減が想定されるところですが、その対 応として、

イ 平成28年 1 月から 9 月までは、駆込み増 を考慮して非課税限度額は縮小(1,200万 円)されました。

ロ 平成28年10月以降は、反動減対策として、

消費税率10%が適用される住宅購入者のみ を対象とした特別非課税限度額を設けるこ とにより、住宅需要の喚起を図り、反動減 が特に大きくなると想定される平成28年10 月から平成29年 9 月までについては、イン センティブ措置を集中させるため、特別非 課税限度額は3,000万円とされました。

ハ 反動減がやわらぐ平成29年10月以降の

(特別)非課税限度額は段階的に縮小して いくこととされました。

 以上をまとめると、以下のとおりとなります

(措法70の 2 ②六、七)。

住宅の新築等に係る 契約の締結期間

特別非課税限度額 非課税限度額 良質な住宅 一般住宅 良質な住宅 一般住宅       ~平成27年12月 ― ― 1,500万円 1,000万円 平成28年 1 月~     9 月 ― ―

1,200万円 700万円 平成28年10月~平成29年 9 月 3,000万円 2,500万円

平成29年10月~平成30年 9 月 1,500万円 1,000万円 1,000万円 500万円 平成30年10月~平成31年 6 月 1,200万円 700万円 800万円 300万円

(注 1 ) 特別非課税限度額とは、特定受贈者が住宅取得等資金を充てて新築等をした住宅用の家屋(その住 宅用の家屋の新築等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額及び地方消費税額の合計額に相 当する額が、その住宅用の家屋の新築等に係る消費税法第 2 条第 1 項第 9 号に規定する課税資産の譲 渡等につき社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改 正する等の法律(平成24年法律第68号)第 3 条の規定による改正後の消費税法第29条に規定する税率 により課されるべき消費税額及びその消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額の合計額 に相当する額である場合に限ります。以下「10%適用住宅」といいます。)の上記表の住宅の区分及び 住宅の新築等に係る契約の締結期間に応じ、それぞれに定める金額をいいます。

 なお、上記表の住宅の区分のいずれにも該当する場合(同一年中に一般住宅の購入とその住宅を良 質な住宅になるよう増改築した場合など)には、いずれか多い方の金額となります。

(注 2 ) 非課税限度額とは、特定受贈者が住宅取得等資金を充てて新築等をした住宅用の家屋(平成28年10 月以後にその住宅用の家屋の新築等に係る契約を締結した10%適用住宅を除きます。)の上記表の住宅 の区分及び住宅の新築等に係る契約の締結期間に応じ、それぞれに定める金額をいいます。

 なお、上記表の住宅の区分のいずれにも該当する場合(同一年中に一般住宅の購入とその住宅を良 質な住宅になるよう増改築した場合など)には、いずれか多い方の金額となります。

(注 3 ) 特別非課税限度額及び非課税限度額は、既にこの特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しな かった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額までの金額とされます。ただし、

特別非課税限度額については、平成28年 9 月30日までに住宅用の家屋の新築等に係る契約を締結して この特例の適用を受けた非課税限度額は、「贈与税の課税価格に算入しなかった金額」には、カウント しません。

 また、同一年中に、個人から消費税の課されない中古住宅を取得し、その住宅を消費税率10%で増 改築等をした場合等で、かつ、この取得及び増改築等に係る契約の双方が平成28年10月 1 日以後に締 結されている場合には、特別非課税限度額又は非課税限度額のうち、いずれか多い方の金額を適用す ることとなります。

 一方、同一年中に、個人から中古住宅の取得(平成28年 9 月30日までに契約を締結したものに限り ます。)をし、その住宅を消費税率10%で増改築等(同年10月 1 日以後に契約を締結するものに限りま す。)をした場合等には、特別非課税限度額及び非課税限度額の双方を適用することができます。

(注 4 ) 良質な住宅については、下記⑶を参照してください。

(参考) 特別非課税限度額の「3,000万円」につい ては、住宅の主な一次取得者層である30歳 代の者が、全国の平均価格の住宅(戸建)

を購入しようとした場合に、住宅ローンの 借入可能額や平均的な貯蓄額などを基に計 算した不足の部分の金額として設定されて います。

⑵ 震災特例

 非課税特例は経済対策として講じられていた ものであることから、早期に住宅需要を喚起す るため、非課税限度額は逓減していく制度であ ったのに対し、この特例は、復興支援を目的と するものであることから、改正前の非課税限度

額は、1,500万円(一般住宅は、1,000万円)で、

3 年間一定となっていました。

 今般の改正においては、今後、被災地沿岸部 における面整備事業による宅地の供給が増加し ていくことや住宅建設価格が高騰している状況 等を踏まえ、上記1のとおり、適用期限が延長 されるとともに、非課税限度額については、基 本的には、1,500万円(一般住宅は、1,000万円)

で一定ですが、非課税特例よりも非課税限度額 が少なくなる期間がないように、平成28年10月 以降に10%適用住宅の新築等に係る契約を締結 した場合には、非課税特例と同様に、特別非課 税限度額が設けられました(震災税特法38の 2

②六、七)。